理論や正しさよりも大事なものがあるのでは? 漫画『キン肉マン』が伝えてくれたおおらかさ

TVアニメ『キン肉マン』完璧超人始祖編 ティザービジュアル 
(C)ゆでたまご/集英社・キン肉マン製作委員会

「ゆで理論」はまるで読者のおおらかさを試しているようだ

 1979年に集英社の「週刊少年ジャンプ」で連載開始された漫画『キン肉マン』(作:ゆでたまご)は、誌面を変更して現在も連載中です。2024年7月からはアニメ新シリーズ「完璧超人始祖編」の放送が予定されており、放送日が近づくにつれてファンからの期待の声が高まっています。

 漫画『キン肉マン』が人気を集める理由はいろいろですが、筆者が思うに「ゆで理論」の存在は非常に大きいのではないでしょうか。ゆで理論は作中に正式に言語化されているわけではありませんが、自然法則を無視したような技や、矛盾のあるストーリー展開に対して、いつしかファンの間で言われるようになりました。

 代表的なものとしては、主人公・キン肉マンの仲間であり、ライバルでもある超人・ロビンマスクが放った技「ロビンスペシャル」があります。この技は相手を空中に放り投げると同時に自分も飛び上がり、相手が頭から落下する間に追い越して、足を相手の首に絡ませなければなりません。物理法則では物体の重量に関係なく、落下速度は変わらないはずですが、ロビンマスクが着用している鎧の重さのおかげで、相手を追い越すことができると描かれています。

 このほかにも、悪魔将軍に技をかけられているはずのジェロニモが、別のコマではジェロニモを叱咤する仲間と一緒に存在しているなど、思わずつっこみたくなるような展開も多く描かれているのです。

 令和の時代になり、どこか息苦しさのようなものを感じているのは筆者だけではないでしょう。ニュースを見れば、誰かの不祥事をどこまでも叩くようなコメントがあったり、少しのミスを強く指摘する人がいたり、何か「おおらかさ」を失いつつあるのでは、と残念に思っています。

『キン肉マン』に対しても「あそこがおかしい」「つじつまがあっていない」など、細かい指摘をしたくなる人もいるでしょう。しかしそれが過度になると、作品のおおらかさを失わせてしまうかもしれません。

 もしゆでたまご先生が、物理法則を無視せず、理論通りの世界を描いていたら、前述のロビンスペシャルは誕生していなかったし、ウォーズマンのダブルベアクローも描かれていなかったでしょう。

 間違いを正すことは重要です。しかしそのベースにはおおらかさや寛容さが必要なのではないでしょうか。そんな学びを筆者は『キン肉マン』から教わりました。この秋から始まる新シリーズのアニメでも、ゆで理論は発揮されるでしょう。多くの人に視聴していただき、おおらかさを感じて頂きたいと思います。






関連記事一覧