危険な衝突から選手を守る!「コリジョンルール」を徹底解説!

野球の魅力の一つといえば、白熱した試合展開の中で生まれる、一瞬の判断と迫力満点なプレーの数々でしょう。中でも、本塁上でのクロスプレーは、手に汗握る興奮と、球場全体を包み込む熱気が最高潮に達する瞬間です。

しかし、そんなスリリングなクロスプレーの裏には、選手たちに重大な怪我を負わせてしまうリスクが常に潜んでいます。特に、本塁上での激しい接触は、選手生命に関わる重大事故に繋がりかねません。

そこで、選手たちを危険な衝突から守るために、2014年から導入された重要なルールがあります。それが「コリジョンルール」です。

今回は、この「コリジョンルール」について、具体的な事例を交えながら、その目的、内容、そして、野球界全体への影響について、深く掘り下げて解説していきます。

「コリジョンルール」とは? 導入の背景と目的を理解しよう

「コリジョン(Collision)」とは、日本語で「衝突」を意味する言葉です。その名の通り、「コリジョンルール」とは、本塁上でのクロスプレーにおいて、捕手と走者の危険な衝突を避けることを目的としたルールです。

このルール導入の背景には、2011年にMLBで起きた、サンフランシスコ・ジャイアンツ捕手(当時)のバスター・ポージー選手が、激しいクロスプレーで重傷を負ったという痛ましい事故がありました。

当時、ポージー選手は本塁を守る捕手として、ホームへの送球を捕球しようとした際に、走者と激しく衝突。その衝撃で、彼は左足に重度の骨折と靭帯断裂という大怪我を負い、長期離脱を余儀なくされました。

この事故は、野球界に大きな衝撃を与え、選手生命を守るための安全対策の必要性が強く叫ばれるようになりました。そして、MLBを皮切りに、日本プロ野球でも2014年から導入されることになったのです。

コリジョンルールの具体的な内容: 捕手と走者、それぞれの注意点

コリジョンルールでは、捕手と走者、それぞれに以下の制限が設けられています。

【捕手側のルール】

  • 走路を空ける: 捕手は、送球を捕球する前に、ホームベース上にいるランナーの走路を塞いではいけません。送球が逸れた場合でも、ホームベースの前方に移動して捕球するなど、走者の走塁を妨害しないようにする必要があります。

    • 例えば、三塁走者がホームを狙っている際に、捕手は送球を待つ間、ホームベース上を空けておく必要があります。たとえ送球がホームベースからずれてしまったとしても、走者の走路を塞ぐように体を入れてはいけません。

  • 捕球のための移動はOK: ただし、送球を捕球するために移動する必要がある場合は、走路から大きく外れずに、捕球動作を行うことが認められています。

    • 捕手は、送球を捕球するために、ホームベースに向かって移動することができます。しかし、その際も、走者の走路を完全に塞ぐような動きは避けなければなりません。

  • ブロックの禁止: 送球が届く前に、ホームベース上を完全に塞ぐような形でブロックをする行為は禁止されています。

    • 以前は、送球が逸れた場合でも、捕手がホームベースを体で塞ぎ、走者のタッチを阻止するプレーが見られましたが、コリジョンルールでは、このような行為は禁止されています。

【走者側のルール】

  • 故意の衝突は禁止: 走者は、たとえアウトを避けるためであっても、故意に捕手に体当たりしたり、スライディングで捕手の足元を狙ったりする行為は禁止されています。

    • これまでは、走者が捕手を突き飛ばすような形でタッチをかわすプレーがありましたが、コリジョンルール導入後は、このような危険な行為は禁止されています。

  • 正当なスライディング: ホームベースに触れることを目的とした、通常のヘッドスライディングは認められています。

    • 走者は、安全にホームベースに到達するために、スライディングをすることができます。ただし、その際も、捕手への危険な接触を避けるように、スライディングの仕方には注意が必要です。

  • 避ける努力: 捕手が走路を塞いでいる場合は、走者は衝突を避けるために、スライディングのコースを変えたり、ジャンプしたりするなどの努力をする必要があります。

    • 捕手が送球を捕球するために、やむを得ずホームベース付近に移動してきた場合、走者は衝突を避けるように、自身の走塁にも注意しなければなりません。

コリジョンルール導入による影響: 選手の安全確保と新たな課題

コリジョンルールの導入により、本塁上での危険な衝突は大幅に減少しました。選手たちは、以前のように体当たりの危険を冒すことなく、安全にプレーできるようになったと言えるでしょう。

一方で、「コリジョンルール」は、従来のクロスプレーの醍醐味を奪ってしまうという意見や、判定が複雑になり、審判の判断が難しくなったという声も上がっています。

  • 迫力不足?: これまでのような、体と体がぶつかり合うような迫力満点なクロスプレーが見られなくなったことは事実です。

  • 判定の難しさ: 捕手と走者の動きが複雑に絡み合うクロスプレーでは、コリジョンルールに違反しているかどうかを、瞬時に判断することは容易ではありません。そのため、リプレイ検証が導入されたとはいえ、審判の判定に委ねられる部分も大きく、難しい判定が求められます。

しかし、選手の安全を第一に考えるのであれば、「コリジョンルール」は必要なルールと言えるでしょう。

まとめ: 選手の安全を守るための重要な一歩

コリジョンルール導入の目的は、あくまでも選手を守ることにあります。

野球は、スピード感と迫力、そして、時折見せるアクロバティックなプレーに魅力がありますが、選手たちの安全があってこその魅力です。 コリジョンルールは、選手たちが安心してプレーできる環境を守るための、重要なルールと言えるでしょう。

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